小説用掲示板 7420


白き魔女と魔女狩り

1:ふー :

2011/02/27 (Sun) 22:07:57

それは、寒く雪が世界を覆っている頃のことだった・・・。

「あぁ~ん! 寝坊した~!」

部屋を勢いよく飛び出し、半泣きでいる少女
彼女の名は、ルシェー・ガラヴァードと言う。
魔女であるが、未熟で見習いと言ったところ・・・

通いでとあるお屋敷にメイドとして、雇ってもらっているのだが
朝寝坊の常習犯で、いつもの如く慌てて家を出るところである。

ドカン!ガラガラガラ・・・

部屋を出た勢いがよかったのか、階段を踏み外し転げ落ちる。

「いたた・・・んもっ!」

すぐさま起き上がり、急いで外に出た。
家の外に出たルシェーは、ほうきに跨り小さく呟いた・・・

「風の精霊よ、私の羽となれ・・・」

ルシェーの周りの空気が、一瞬止まったかと思うと、一気に空に飛び上がった。
一気に飛び上がったためにコントロールを失い、冷たい大きな空に
悲鳴を上げながら、彼女は飛んでいった。
2:ふー :

2011/02/28 (Mon) 22:04:52

「ルシェー・・・たまには、早く起きろよ!」

突然背中から、話しかける一匹のウサギ
このウサギの名前は、ワーズと言う。
ルシェーの使い魔である。

「だってぇ~・・・そうだ!ワーズが起こしてよ!」
「は・・・? なんで、俺が起こさなきゃならないんだ?」

毎日こんな感じである・・・。

この世界で魔女は、珍しいものではない。
ただし、純聖の魔女(処女の魔女)は多くはない。
なぜなら、男性と交わることで
簡単に魔力を手に入れることができるからである。

多くの魔法、大きな魔力を手に入れたければ
数多くの男性と交われば、手に入れることができる。
誰でもいいと、言うわけではないが
探すことは、そう難しいことではない。

そして、なにより交わった男性は魔女の言いなりとなる。
この利点を使って、一国を手に入れた魔女もいると言う・・・。
3:ふー :

2011/03/01 (Tue) 17:25:08

「ねぇ~、ワーズ・・・」

少し俯き気味にルシェーは、尋ねた

「なんだよ?」
「私って、お母さんのような魔女になれるかな?」

唐突な質問にワーズは、眼を点にした。

「は? なんだそりゃ?」

よく意味がわからずに答えた。

「だって、お母さんって・・・」

ワーズは、ルシェーが言い終わる前に

「ま~、なれるんじゃないか?」

そう言って、背中からほうきにするりと降りた。
しばらく飛んでいると、小高い丘の上に大きな屋敷が見えてきた
ルシェーは、屋敷の庭に降りると、急いで勝手口に向かった。

ルシェーは、この屋敷でメイドとして働いている
魔女と言っても、ただ飯を食べられるほど世の中は甘くない。

夜は、魔術を習いに師匠の家に行っている
この生活が、朝寝坊の原因の一つともいえる・・・のかもしれない。
4:ふー :

2011/03/03 (Thu) 23:05:42

「おはようございます~!」

勝手口の前にいる、小柄な幼い少女に大きな声で挨拶をするが・・・しかし

「遅いよ! ルシェー!」

小柄な少女は、少し怒った感じで答える。

歳は12歳で、名前をユシア・シェルードと言う
屋敷にある事情で、住み込みで働いているメイドの一人である。
この屋敷には、彼女を合わせて3人のメイドがいる
ルシェーを入れれば、4人のメイドが働いていることになる。

「ルシェー早く洗濯物から片付けよう」

そう言ってユシアは、ルシェーに洗濯物の詰まったかごを渡し
ユシア自身も、かごを抱えて庭の物干し竿の方に向かった。

「今日もいっぱいだね・・・がんばらないと」

ルシェーは、ユシアにそう言って仕事を始めた・・・
ある程度片付くと、ユシアはこう言った。

「今日から、アスタヴァール様が帝都に行くんだって」

ルシェーには、それがどれほどの意味があるか、わからなかった

「帝都? 何か用があるの?」
「もしかすると、また戦争が始まるかもしれないんだよ・・・」

ユシアは、少し俯き気味に答える。
彼女は、戦争で両親を亡くしていて、彼女達を引き取ったのが
この家の当主のアスタヴァール・レジルドンと言う若い貴族だった。

あえて彼女達と書いたが、ユシアのほかに2人の姉がここに住んでいる
長女は、メリアと言い今年で17歳である
アスタヴァールと結婚することになっているのだが、多少の事情があるとか、ないとか・・・?
次女の名前は、リリアと言いルシェーと同い年で14歳
歳が同じためか、ルシェーとは何かと馬が合うようだ。
5:ふー :

2011/03/06 (Sun) 11:15:48

話しをしながらだが、洗濯を終えて二人は厨房に向かった
厨房では、リリアが一人で昼食の仕込みをしているところだった
二人に気が付くと、リリアは少し意地悪に言った。

「洗濯物の量は、さぞかし多かったのですね
 早くこちらを手伝ってくださいね」

「ごめんね・・・おね~ちゃん、何からすればいいの?」

リリアは、二人にパンとスープをお願いすると、肉をかまどに入れて
メリアのところに行くと言って、厨房を出て行った。

「ルシェーは、パンをお願いね」
「了解!」

二人は、それぞれパンとスープに取り掛かった。

「この形が、難しいのよね・・・」

ルシェーは、パンに悪戦苦闘していた。

「ふんふん~♪ ふ~ん~♪」

ユシアは、鼻歌を歌いながらスープをこなしていった。
20分もしたころであろうか?
厨房を離れていた、リリアが戻ってきた。
そして、二人の状況を見てこう言った

「二人とも、そろそろいいかしら?」
「スープはできたよ!」
「パンもできた!」

何とか、ルシェーも終えたようだった。

リリアは、二人に配膳を頼むと、かまどに入れていた肉を出して
ルシェー達に一緒に持って行くようにと、お願いをし厨房を出ようとした。

「あっリリア・・・ううん、なんでもないよ」

ルシェーは、リリアにひと声をかけようとしたが
いつになく忙しないリリアを見て、思いとどまった
リリアは、それを察したのか何も言わずに厨房を後にした。
6:ふー :

2011/03/07 (Mon) 19:42:30

「ルシェー早く、持っていこうよ?」

少しボーとしていたので、ユシアは声をかけた

「うん・・・」

そう返事をして、すぐに食堂に食器と料理を運んだ
食堂に運び終えると、8人分の食器をテーブルに配った
屋敷の主アスタヴァール、従者のフォスター、クレモンド
メイドのメリア、リリア、ユシアと、馬の世話係のダービー
それと、ルシェーの分である。

この屋敷では、屋敷に関係するものが、可能であれば
必ず食事に参加すると言うのが、慣わしなのである。

食器を配り終えたところで、長女のメリアがやってきた
メリアは、準備ができているのを確認すると、ルシェーこう言った。

「ルシェー申し訳ないのだけど、フォスター様とクレモンド様を
 呼んできていただけないかしら?」
「フォスター様と、クレモンド様ですね
 わかりました、すぐに行って参ります」

そう返事をしてルシェーは、食堂を出て二階に向かった。
この屋敷の二階には、アスタヴァールの書斎と、フォスターとクレモンドの部屋がある。

ルシェーは、階段を颯爽と駆け上がり
まずは、フォスターの部屋をノックした。

コンコン!

「あれ、いないのかな・・・?」

もう一度ノックするが、返事がない・・・やはりいないようだ。
仕方なく、クレモンドの部屋に向かった
7:ふー :

2011/03/08 (Tue) 19:29:37

ドアの前に着くと、早速ルシェーは、ノックをした

コンコン!

「開いてるぞぉ~」

中から野太い声が聞こえた。

「クレモンドさんご飯の用意ができたので、食堂に来てください」
「その声は、魔女っ娘お嬢だな!」

そう言って、クレモンドはドアを開けた
部屋の中から出てきた人物は、2メートル近くありそうな身長と
がっちりと引き締まった身体は、一流の戦士を思わせる風格であった。

「がはは・・・やっぱり何をおいても、飯だよな! お嬢よ!」

クレモンドは、そう言ってルシェーの頭を撫でた

「くすぐったいよ・・・クレモンドさん」

ルシェーは、そう言って身を捩った
その姿に満足そうな笑みを浮かべ、頭をさらに撫でた

「そうだクレモンドさん!」
「なんだいお嬢?」
「フォスターさんが、どこにいるか知りませんか?」
「あぁ~、あいつならあれだ、外で弓のお稽古だろ?
 いつもこの時間は、やってるからな」
「わかりました、ありがとうございます」

一礼して、ルシェーは外に向かった
そしてクレモンドは、がっははは・・・という笑い声を響かせながら、食堂に向かった。
8:ふー :

2011/03/10 (Thu) 19:53:27

階段を降り、厨房を抜けて、勝手口から外に出ると
何かが、風を切る音が聞こえた。
ルシェーは、音のする方を見ると
そこには、長めの黒髪で綺麗な男性が弓を構えていた。
すぐにそれが、フォスターと気が付くと声をかけた

「フォスターさん! 昼食の用意ができましたよ~」

勝手口から、大きな声で呼びかけた。
しかしフォスターには、聞こえいなかったのか返事がない
それどころか、フォスターは、練習相手の案山子に狙いを定めて弓を引いた
矢は、先ほどと同じく風を切る音を発しながら、その先にある案山子を射抜いた。
それを確認するとフォスターは、ルシェーの方を向きこう言った

「すいません・・・練習中だったもので
 すぐに行きますので先にいっていてください」
「はぁ~い!」

ルシェーは、返事をして食堂に向かった。

「ふぅ・・・」

フォスターは、ため息をついて、弓の弦を外した。
どうやら、何かに集中しているときは、邪魔をされたくないタイプのようである。
9:ふー :

2011/03/11 (Fri) 20:34:14

食堂に戻ると、すでにルシェーと、フォスター以外はそろっていた。
ルシェーは、アスタヴァールに挨拶をすると席に着いた
それから程なくして、フォスターもやってきた。

「申し訳ない、お待たせしてしまったようですね」

フォスターは、そう言って席に着いた。
アスタヴァールは、全員がそろったのを確認すると

「天の恵みを太陽神シルヴァと、月の女神アルケナに感謝いたします」

そう言って、祈りを捧げて全員に食事を勧めた。
料理は、肉料理、スープとパンとチーズ、そして葡萄酒とヤギの乳
これが、この地方での庶民的な昼食の定番といえる。

レジルドン家は、貴族と言っても裕福とは、言えるものではなかった
あるのは、屋敷と畑と森と湖だけで、特別な財産と呼べるものなかったが
アスタヴァール自身にとっては、それだけで十分であった。

彼は、幼少のころにメリア達の父トルーテに命を救われたことがあった
その恩を返すつもりで、三姉妹を自分の屋敷に招いたのだが・・・メリアは、これを断った
アスタヴァールは、この理由を未だに知らない、あえて聞こうともしない
この時は、断られたが後にメリアとの結婚を前提に屋敷に招き、今に至っている。
10:ふー :

2011/03/14 (Mon) 21:12:30

「ところで・・・メリア」

食事を始めて、最初に口を開いたのは、アスタヴァールだった

「留守中のことでしたら、何のご心配もございません」

メリアは、そう言って食事をするのを止めた
アスタヴァールは、一瞬目を閉じてメリアにこう言った

「いや、そうではなく・・・今回は、君にも一緒に来てもらいたいのだが?」
「・・・わかりました」

ルシェーには、返事をするのを躊躇ったかのように見えた

「それで、留守をクレモンドに任せたい」
「えぇ~、あっしですか? わかりやしたよ大将」

渋々だが、クレモンドは留守を引き受けた
ルシェーとしては、それが少し嬉しかった。
雑談をしている間に昼食は終わり、それぞれ席を立った

「ユシア、ルシェー片づけを任せていいかしら?」

メリアは、二人にそう言って、すぐに自分の部屋に向かった。

「ルシェーサボっちゃダメだよ?」
「サボらないよ!」

二人は、少しふざけながら片づけを始めた。

「ねぇ、ルシェー?」
「ん?なに?」
「今夜は、屋敷に泊まっていきなよ!
 リリアお姉ちゃんも喜ぶよ!」

ユシアは、楽しそうに言う
ルシェーは、それを断りきれずに了承した。

「やったー! 今日は寝れないからね!」

そう言って、ルシェーに抱きついた。
11:ふー :

2011/03/18 (Fri) 16:23:27

片付けも終わり、勝手口から外に出るとダービーが、馬車の用意をしていた
その横では、リリアが馬車に荷物を運んでいる所だった。
リリアは、ルシェーたちに気がつくと、手伝ってほしいと言い
玄関にまとめてある、荷物を馬車に運んだ。
3人で、荷物を運び終えた時には、リリアは少し疲れた様子だった。

「何とか終わったわね・・・」

リリアは、メリアも帝都に行くということを昼食のときに知ったため
慌ててメリアの荷物も、まとめなくてはならなくなったのだ

「何で、メリアさんも今回は、行くことになったの?」

ルシェーは、リリアに聞いてみた

「おそらく・・・ま~大人の事情ですよ」

リリアは、適当にはぐらかした。
そんな話しをしていると、メリアが出てきた

「準備ありがとう・・・リリア」

そう言って、留守のことをお願いすると言い馬車に乗り込んだ。
その後すぐにアスタヴァールと、フォスターが出てきた

「見送りはここまででいいよ、みんな屋敷に戻ってくれ」

アスタヴァールは、そう言うと馬車に乗りドアを閉めた。
その後にフォスターが、馬車の前に乗り後は、お願いしますと言って出発した
全員は、馬車が見えなくなるまで見送り続けた。
12:ふー :

2011/03/21 (Mon) 19:58:43

「さぁ~、アスタヴァール様がいなくても仕事はありますからね!」

リリアは、そう言って全員を屋敷に戻した。
全員は、それぞれ自分の仕事をすべき場所に向かった
夕食の用意をするためにリリアと、ユシアは、厨房に向かい
ダービーは、馬と鶏の世話に家畜小屋に向かった

「お嬢は、どうするんだい?」

クレモンドは、特にすることもないので、ルシェーに絡んでみた

「私は、洗濯物を取り込みですよ~」
「んじゃ俺は、いっちょ~薪割りでもするかな」

適当な会話をしながら、二人は庭に向かった
庭では、まだ残っている雪の上を1匹のウサギが、跳ね回っていた

「あっ・・・!」

ルシェーには、それがワーズとすぐに気がついたが
それを知らないクレモンドは、ワーズを捕まえようとした

「今日は、ウサギ鍋かね~」

そう言って、ワーズを追い掛け回し始めた
ルシェーは、それが面白かったのでしばらく見ていた
使い魔と言っても、元はただのウサギだったが、さすがに人間には、簡単には捕まらない
いつしか、クレモンドも諦め降参した。

「ふふふ・・・このワーズ様をなめるな~!」

少し偉そうにワーズは、勝ち名乗りを上げた
それを見たクレモンドは、驚いてこう言った

「あぁ~ん! こいつは、お嬢の使い魔か?」

ルシェーは、笑いを堪えきれなくなって笑い転げた。
13:ふー :

2011/03/24 (Thu) 22:55:54

「なんだよ・・・早く言ってくれよ!」

クレモンドは、そう言いながら薪割りを始めた
それを見たルシェーは、自分の仕事を思い出し洗濯物を取り込み始めた・・・。
いつしか、日も暮れて夕食の終わったころである
ルシェーとリリアは、片付け物をするために厨房にいた

「ルシェー明日一緒に街へ買い物に行きません?」
「リリアから、誘ってくれるなんて久しぶりだね」
「そうかしら? 最近こうやって、泊まっていく事がなかったからじゃない?」

思い出してみると、ここ半年ほど屋敷に泊まっていった覚えがなかった
ルシェーのここ半年は、師匠の所へ行き魔術の修行があったために
泊まっていく事がなくなっていた。

「そうだね・・・久しぶりかも」

そんな話しをしていると、厨房にユシアが顔を覗かせた

「片付け終わったら、ゲームしよ!」

そう言って、ユシアは二人を急かした。
14:ふー :

2011/03/27 (Sun) 08:23:44

「まったく・・・いつまでも子供なのだから」

リリアは、歳より染みたことを言って、持っていた食器を棚にしまった

「なんかリリア・・・おばさんくさ!」
「ルシェー・・・終わったら、お話しが・・・」

ルシェーは、リリアの殺気のようなものを感じて、厨房すぐさま逃げ出した

「まったく・・・ルシェーも、いつまでも子供なんだから・・・」

厨房を出たルシェーは、暖炉のある居間に向かった
居間には、ユシアとクレモンドが、何かを話していた

「お~終わったかい」
「ルシェーはやくはやく!」

二人に急かされて、横に座った
その後すぐにリリアとダービーもやってきた

「ルールは、わかっていますよね?」

リリアは、そう言いながら全員にカードを5枚ずつ配り始めた

「負けた二人が、明日の買い物当番でいいんだよね?」

ユシアは、そう言ってゆっくりと配られたカードを見た

「ま~勝つのは決まってるんだけどな」

クレモンドは、ほとんどカード見ずに伏せた

「・・・・・」

ダービーは、無言のままカードを見つめている

「ふふふ・・・」

ルシェーは、奇妙な含み笑いをしてカードを見ている
全員カードを確認すると、木彫りのコインのようなものを
自分の前に1枚ずつ置いた

「私は、1枚乗せます」

リリアは、コインを1枚乗せた
他の全員は、カードを見て考えている様子だ

「よし、乗ったぜ」

クレモンドは、コインを乗せた
無言で、ダービーもコインを乗せた

「むー・・・降りる!」

ユシアは、カードを戻して次の回に賭けることにした
そして、ルシェーは・・・

「私は、2枚乗せますよ!」

強気に2枚乗せてきた。
15:ふー :

2011/03/29 (Tue) 20:27:08

「お嬢は、手がいいのか~?」

クレモンドは、ルシェーの顔色を伺う・・・
ルシェーは、にこにこしている

「これは、分が悪そうだ・・・降りだ降り!」

カードを戻して、ふんぞり返った
しかし、ダービーは、コインを1枚乗せてコールした。

「どうしたものかしらね・・・」

リリアは、ルシェーを一度見るとコインを1枚置いた
これで、ルシェーとリリアとダービーの3人の対決となった

「では、よろしいですか?」

リリアは、上乗せがないことを確認する
ダービーは、無言で頷いた

「後悔するよ~!」

ルシェーは、強気に言う
3人の上乗せがないのを確認すると、一斉にカードをオープンした

「へへ~、6のスリーカード!」

ルシェーは、自慢げにカードを見せびらかした
続いて、ダービーのカードを全員が、確認した

「やるな~、ジャックと4のツーペアか~」

クレモンドは、ちょっと残念そうに言う

「お姉ちゃんは~?」

ユシアは、身を乗り出して、リリアのカードを確認する

「クイーンのスリーカード」
「えぇ~」

それを見たルシェーは、がっくりと肩を落とした

「まだまだですね・・・」

リリアは、全員のカードを集めて
再び配り始めた・・・夜は、まだまだ長いようである。
16:ふー :

2011/04/01 (Fri) 20:02:56

翌朝・・・
荷馬車で、ルシェーとダービーは、ショナルと言う街を目指していた
昨夜のカードの敗者は、結局ルシェーとダービーであった。

「ねぇねぇ! あれは、絶対リリアがずるをしていたよね!?」

昨日の負けが、どうにも納得できないらしい
しかしダービーは、相変わらず無口であった
そんなやり取りを30分ほども、しているうちに街が見えてきた。
春先のこの時期は、干した肉、魚などがいたるところで、店頭に並んでいる
それと、この地方の特産である果実酒も数多く出回っている。

ダービーは、メモを取り出し頼まれているものを確認した
荷馬車を止めて、ルシェーにメモの内容を伝えると
二人は、手分けをして、露店を巡ることにした。

「じゃ~、終わったらここに集合ね!」

ルシェーは、そう言って露店街の北側を目指した
北側は、果物や果実酒がメインである。
逆に南側は、干し肉や魚がメインである。
17:ふー :

2011/04/04 (Mon) 18:18:30

ダービーは、ルシェーと分かれた後、南側に向かった
メモに書かれている干し肉を買うためである。

「あんちゃん! 今日はいい魚入ってるよ!」
「おにーさん! こっちこっち!」

露店街は、とても活気があり
いたるところから、声をかけられる
ダービーは、目的のものを探しながら、キョロキョロとしていると
こっちに向かって、何かが迫ってくるのに気がつく
それは、とても大きな馬二頭が牽く馬車であった。

「おらおらおら~あぶね~ぞ~!!」

馬車の御者は、狂ったかのように鞭をいれて、馬を走らせていた
ダービーは、その馬車に気がつくと、すぐに横に避けようとしたが
馬車の前に逃げ遅れた、小さな子供がいるのに気がついた。
御者は、気がついていないのか、速度を落とそうとせずに
そのままのスピードで、走りぬけようとしていた。

「あぁ~・・・あわわわ~」

街の人は、それを見ているしかなった・・・が
ダービーは、とっさに飛び出しその子を助けようとした
そして子供を抱きかかえて、すぐさま横に飛んだ

「おらぁ~じゃまだ~!!」

馬車は、それを見ても速度を落とすことなく突っ切っていった・・・
18:ふー :

2011/04/08 (Fri) 01:03:50

「大丈夫?」

ダービーは、小さな声で助けた子供に話しかけた
その子は、泣きながらダービーにしがみついた。
周りでそれを見ていた人たちは、ダービーを囲み労った

「あんたすげーな!」
「かっこよかったよ!」
「あれは、デラルド伯爵の馬車だったな~・・・」

ダービーは、なんだか恥ずかしくなりその場を後にした。
その頃ルシェーは、北側の露店街で目的のものを早くに見つけ
ふらふらと、時間をつぶしをしていた。

「ん~ん~んん~♪」

何の歌だか、わからない鼻歌を歌いながら歩いていると
何者かの視線を感じた。
ルシェーは、それに気がつくと露店街から外れた路地を目指した
その路地は、袋小路になっていて
何者かが狙うなら、絶好の場所となるであろうことを予想して
そちらに向かった。

19:ふー :

2011/04/09 (Sat) 18:51:40

袋小路に入ると、人がいないことを確認して振り返った。

「さっ! 出てきなさい!」

ルシェーは、とりあえず勇ましく言ってみた・・・

「へへへ・・・俺達に気がつくとは、お嬢ちゃん何者だい?」
「げへへ・・・兄貴~俺もうたまんねぇ~」
「ぐへへ・・・俺もだよぉ~」

どうやらこの辺にいるチンピラのようである
人数は三人で、手にはナイフを握っている。
ルシェーは、それを確認するとため息をついた

「ねぇ~おじさん達、今なら見逃してあげるけど?」

ルシェーは、そう言って三人をやり過ごそうとした。

「あ、兄貴ぃ~もうだめだ~我慢何ねぇ~」

チンピラの一人が、そう言って飛び掛っていった
ルシェーは、仕方なく小さな声で呪文を唱えた。

「風の精霊よ・・・我を守る障壁となれ!」

その瞬間向かっていったチンピラは、何かに吹き飛ばされて
壁に激突し気絶した。

「なんだ! あのやろう魔女か!」
「兄貴! やっちまおうぜ!」

今度は、二人同時に襲い掛かってきた
ルシェーは、また呪文を小さく唱えた。

「風の精霊よ・・・我を守る障壁となれ・・・」

先ほどと同じ魔法で、一人は同じく吹き飛ばされ壁に激突した
しかし一人は、それを予期し、その障壁の前で止まり再び向かってきた。

「同じのが通じるか~! 弟のかたきじゃ~!」

ルシェーは、一歩下がり呪文を唱えた

「風の精霊よ・・・その力雷となれ!」

唱え終わると、ルシェーの掌から光る弾が、チンピラ目掛けて飛び出した
その弾は、一瞬でチンピラにぶつかり光が弾けた

「あばば・・・びりびりします~・・・」

そう言って、黒焦げにはならないが崩れ落ちた。
20:ふー :

2011/04/14 (Thu) 11:20:11

「まったく・・・」

チンピラ達をやっつけたルシェーは、すぐにその場を後にした

「あばば・・・まだ痺れるぅ~」

チンピラのリーダーが、七転八倒している様を見下ろしている若い男がいた
正確に言うと、今のチンピラとルシェーのやり取りを一部始終見ていたのである

「おい・・・起きろ」

そう言って、チンピラのわき腹を軽く蹴った
しかしチンピラは、すぐには起きられそうもなかった。

「ちっ! ほら、約束のものだ」

男は、布の袋をそのチンピラの横に投げた
袋が、地面に落ちるとチャリンチャリンと、聞きなれた金属音がした。

「へへ・・・旦那たしかに・・・あばば・・・」
「よかったなぁ~相手が、弱い魔女で」

そう言って、男は、ルシェーの向かった方に歩いていった。
21:ふー :

2011/04/19 (Tue) 18:22:06

ルシェーが、集合場所に行くと
すでにダービーは、買い物を終えた様で荷物を馬車に積んでいた。

「遅くなってごめんなさい~」

ルシェーは、すぐに荷物積みを手伝い始めた
それほどの量が、あったわけではないので
すぐに積み終わり、街を出発した。

「それにしても、今日は寒いね~」
「雪が・・・降るかも」

ルシェーは、空を見上げた
とても重く、灰色の空が広がっていた。

「早く帰らないと、大変なことになりそうだね」

ダービーは、頷いて手綱を絞った・・・
街から20分ほどした頃だろうか?
急に辺りに霧が立ち込め始めた。

「うわ・・・急がないと!」

ルシェーは、ダービーを急かしたが
森を抜ければ、屋敷はすぐなので、慌てる必要がないと判断したのか
ダービーは、速度を変えなかった。

「おい! ルシェーこの霧・・・」

荷物に隠れていたワーズが、顔を出した

「あれ? そんなところにいたの?」
「あれじゃねぇ! この霧に魔力を感じる」

そう言って、ワーズは耳を立てた。
22:ふー :

2011/04/23 (Sat) 18:33:48

「ねぇダービー? 先にお屋敷に戻っていて」

ルシェーは、そう言うなり馬車から飛び降りた
何がなんだか、分からずにダービーは、馬車を屋敷に急がせた。

「賢明な判断だ・・・」

霧の中から、一人の男が現れた
手には、棒状の武器らしきものを持っている。

「貴方は、誰?」

距離を置いたまま、ルシェーは訊ねた
霧の中で、いまだはっきりとは、相手を捕らえられず
ルシェーは、手を拱いていた

「魔女狩りだよ・・・お前を狩りに来たんだよ!」

男は、そう言うなり棒状の武器を振り下ろした
ルシェーまでは、距離があり当然届かないが・・・
振り下ろしたそれからは、弓矢のような物が、こちらに向かってきた
距離が、あったためかそれは、簡単に回避する事ができたが
ふと気がつくと、ルシェーは、相手を見失っていた

「・・・くっ」

ルシェーは、集中力を高め周りをさらに警戒する。
23:ふー :

2011/04/30 (Sat) 07:44:33

見えない敵を相手すると言うことは、相当な集中力と忍耐力を要求される
しかし未熟なルシェーには、どちらも欠けていた・・・
ルシェーは、状況に耐え切れず、魔術詠唱を始めた。

「風の精霊よ・・・立ち塞がりし敵を退けよ!」

呪文唱え終わると、ルシェーを中心に風が集まり始めた
それは、みるみるうちに大きなものとなり、竜巻へと姿を変えた
竜巻で、霧や相手を一気に吹き飛ばし、状況の打開を図ろうとした。
轟音とともに竜巻は、辺りのものを吹き飛ばしたが
霧は、晴れずより一層濃くなった
竜巻が、過ぎ去った後すぐにルシェーは、次の魔術の詠唱しようとした
その瞬間だった、右足が地面から離れない・・・

「・・・えっ?」

ルシェーは、足元を確認すると、右足は氷付けになっていた
無理やり力で、どうにかしようとするが、とてもどうにかなるものではなかった

「・・・ざま~ねぇ~な~、次の攻撃は避けれないな」

木の陰から、男は姿を見せた
ゆっくりと、こちらに近づいてくる・・・

「来ないで! まだ、魔術は使えるのよ!」

ルシェーの精一杯の強がりである

「やってみろよ!」

相手は、臆することなく、さらに近づいてくる・・・。
24:ふー :

2011/05/15 (Sun) 16:27:28

あと10歩くらいのところで、男は止まった
ここまで近づいて、手に持っている武器が、大きな鎌だと今更だが認識できた
男は、その大きな鎌を振り上げた
そして、ゆっくり振り下ろす・・・

「短い付き合いだったが、お別れだ!」

男は、そう言って鎌を地面に振り下ろした
鎌が、地面の触れた瞬間、周りの空気がそこに集まったかと思うと
キーンと金属を叩くような高い音がし、地を這う氷の津波のようなものが
ルシェー目掛けて、襲ってきた
しかし、その瞬間ルシェーは、少し笑った。

「そうね・・・短い付き合いだったね!」

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